記事: 夏にこそ、ハーブティー。
夏にこそ、ハーブティー。
冷たさだけに頼らない「涼」の楽しみ方
暑い夏。つい手が伸びるのは、氷をたっぷり入れたキンキンに冷たい飲み物です。
もちろん、しっかり冷えた飲み物ならではのおいしさがあります。
けれど、「涼しい」と感じるために、飲み物はどこまでも冷たくする必要があるのでしょうか。
ハーブのことを少し掘り下げてみると、温度とは別の方法で感じる「涼」があることが分かります。
その代表的なハーブが、ペパーミントです。
ペパーミントの「スーッ」はどこから?
ペパーミントを口にしたときに感じる、スーッと抜けるような清涼感。
ペパーミントを特徴づける香気成分のひとつに、メントールがあります。
私たちの感覚神経には、温度などの刺激を感じ取るさまざまなセンサーがあり、そのひとつが「TRPM8(トリップ・エム・エイト)」と呼ばれる受容体です。
2002年に発表された研究では、このTRPM8が低い温度だけでなく、メントールによっても活性化することが報告されました。[1][2]
少し不思議ですが、私たちがミントを口にしたときに感じる「スーッとした冷たさ」には、この仕組みが関係しています。
つまり、
「飲み物そのものが冷たいこと」と、「冷たく感じること」は、まったく同じではない。
ということです。
キンキンに冷やさなくても楽しめる、夏の「涼」
この仕組みを知ると、夏のペパーミントティーの楽しみ方も少し変わって見えてきます。
もちろん、氷を入れてしっかり冷やしたペパーミントティーもおいしい。
一方で、冷蔵庫でほどよく冷やしたものや、氷が少し溶けて温度が上がってきた一杯でも、ペパーミントらしい爽やかな香りと清涼感は楽しめます。
実際、2026年に発表されたヒトを対象とした研究では、暑熱環境下で「37℃の飲料」と「1.5℃の冷たい飲料」、さらにそれぞれにメントールを加えた条件を比較しています。
その結果、メントールによるTRPM8への化学的な刺激は、身体を物理的に冷却することとは別に、温冷感覚に影響を与えることが示されています。[3]
ここで大切なのは、メントールが「体温を下げる」ということではありません。
あくまで、私たちが感じる冷涼感の話です。
だからこそ、
キンキンに冷やすことだけに頼らず、ハーブそのものが持つ香りや清涼感から「涼」を楽しむ。
そんな夏の飲み方があってもいいのではないでしょうか。
ペパーミントティーにも、メントールはある?
メントールというと、ガムや歯磨き粉などに使われる「ミント味」を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、メントールはもともとペパーミントを特徴づける代表的な香気成分のひとつです。
ペパーミント(Mentha × piperita)の香気成分をGC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)によって調べた研究では、メントールやメントンなどが主要な成分として確認されています。[4]
また、市販されているペパーミントティーを分析した研究でも、その揮発成分の中からメントールなどが確認されています。[5]
もちろん、ハーブに含まれる成分の量やバランスは、品種、栽培環境、収穫時期、乾燥方法などによって変化します。
同じ「ペパーミント」という植物でも、その香りはまったく同じではありません。
そんな違いを感じながら飲むことも、ハーブティーの楽しさのひとつです。
夏のハーブティーは、「冷たさ」だけじゃない
ハーブティーの魅力は、単純な温度だけではありません。
グラスを口元へ運んだときに立ち上がる香り。
口に含んだ瞬間の味。
そして飲み込んだあと、鼻へ抜けていく余韻。
ペパーミントのすっきりとした清涼感も、レモングラスの明るく爽やかな香りも、ローズマリーの青々とした香りも。
植物には、それぞれ違った方法で夏の一杯を軽やかにしてくれる個性があります。
暑いから、ただ冷たいものを飲む。
それだけではなく、
香りや味わいまで含めて、「涼」を味わう。
そんな視点でハーブティーを選んでみると、夏のお茶の楽しみ方はもう少し広がるかもしれません。
氷をたっぷり入れてもいい。
ほどよく冷やして、香りをゆっくり楽しんでもいい。
この夏は、植物から感じる「涼」を、一杯のハーブティーで楽しんでみてください。
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参考文献・注釈
[1]McKemy DD, Neuhausser WM, Julius D.
“Identification of a cold receptor reveals a general role for TRP channels in thermosensation.”
Nature. 2002;416:52–58.
DOI: 10.1038/nature719.
[2]Peier AM, et al.
“A TRP channel that senses cold stimuli and menthol.”
Cell. 2002;108(5):705–715.
DOI: 10.1016/S0092-8674(02)00652-9.
[3]Nelson M, Lefebvre K, Newhouse D, Foster F, Ravanelli N.
“Ingesting menthol in a beverage may alter the sweating response during passive heat stress, but only when the beverage is cold.”
Journal of Applied Physiology. 2026;140(2):389–397.
DOI: 10.1152/japplphysiol.00748.2025.
[4]McKay DL, Blumberg JB.
“A review of the bioactivity and potential health benefits of peppermint tea (Mentha piperita L.).”
Phytotherapy Research. 2006;20(8):619–633.
DOI: 10.1002/ptr.1936.
[5]Buleandra M, et al.
“Comparative Chemical Analysis of Mentha piperita and M. spicata and a Fast Assessment of Commercial Peppermint Teas.”
Natural Product Communications. 2016;11(4):551–555.
※本記事では、ペパーミントやメントール等に関する一般的な研究知見をご紹介しています。紹介した研究は当社の商品そのものを対象として実施されたものではなく、当社商品の健康保持増進効果等を示すものではありません。また、本文中の「冷涼感」「涼」は、味覚・嗅覚等を含む感覚的な表現であり、体温を低下させることを意味するものではありません。


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